令和4年4月から、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)が保険適用となりましたが、全てが保険適用というわけではなく、一部に保険適用外となった治療法や医療技術があります。保険適用外の治療法や医療技術は自費診療となりますが、自費診療と保険診療との混合診療は認められていません。そのため、ひとつでも自費診療があると保険診療ができず、全てが自費診療となります。

ただし、自費診療のなかに厚生労働省によって「先進医療」に指定された治療法や医療技術は、指定の医療機関であれば保険診療との併用が可能となります。

保険診療と併用される「先進医療」部分の費用については自費で負担しなくてはなりませんが、自治体の中には費用に助成を行っているところもあります。

※ 先進医療は非課税です。
※ 松江市、島根県、鳥取県では「先進医療」費用の助成制度があります。

 

保険診療と「先進医療」の併用

不妊治療での先進医療について

 

【松江市】不妊治療(生殖補助医療)費助成制度

【島根県】不妊治療<先進医療>費助成事業について

【鳥取県】特定不妊治療費助成

 

当院で実施可能な先進医療

 

タイムラプスインキュベーター(タイムラプス培養器)

費用 30,000円(非課税)

 

タイムラプス培養器

従来の培養器では、胚(受精卵)の正常受精や、胚発育を確認するためには胚を培養器から数回取り出して顕微鏡下で観察を行っていました。
この方法では、胚の成長速度によっては、正常受精や胚分割仕様が確認出来ない場合があり、また胚を培養器外に取り出すことによる培養環境(光、温度、pHなど)の変化が胚発育に悪影響を与えてしまうことが懸念されていました。
タイムラプスインキュベーターでは培養器にカメラが内蔵されており、胚を一定間隔で自動撮影するため、正常受精や胚発育がより正確に評価可能となります。また胚を培養器外に取り出すことがないため安定した培養環境の継続によって、胚の良好な発育が期待されます。
ただし、発育過程を観察するもので、胚の染色体異常などが分かるものではありません。

 

子宮内膜刺激胚移植法(SEET法;シート法)・二段階胚移植法

費用
SEET法 21,000円(非課税)
二段階胚移植法 新鮮胚移植の場合 75,000円(非課税)
凍結融解胚移植の場合 120,000円(非課税)

卵管内で受精した精子と卵子は、受精卵から胚盤胞に発育しながら子宮内腔へと移動し着床すると言われています。
卵管内を移動する胚は子宮内腔に着床を準備するようシグナルを送っていると言われていますが、体外受精では受精や胚培養が体外で行われるため、着床に関して胚と子宮内腔とのシグナルの交換が不十分ではないかと考えられています。
SEET法は胚培養で胚からのシグナルを含んだ培養液を胚盤胞移植前にあらかじめ子宮内腔に注入し着床に適した環境を作り出す方法です。

二段階胚移植法は、先行して初期胚を移植し、胚と子宮内腔とのシグナル交換で子宮を着床しやすい状態へと促し、続いて胚盤胞を移植して着床率が高まることを期待します。
ただし、二段階胚移植法では初期胚を凍結保存しておく必要があり、また同一周期に2個胚移植することとなり多胎妊娠のリスクが高くなります。
子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)・二段階胚移植法は、ともに反復して着床・妊娠に至らなかった方が対象となります。

 

ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI;ピクシー)

費用 23,750円(非課税)

自然妊娠や体外受精では、卵子を取り巻く卵丘細胞に存在するヒアルロン酸に結合できる 成熟精子が選択され卵子と受精します。一方、顕微授精(ICSI)では、精子の形態と運動性から精子が選択されるため、必ずしも成熟精子が選択されるとは限らず、本来なら卵子に侵入出来ない未成熟な精子が注入されてしまう可能性があります。
PICSIとは、ヒアルロン酸に結合出来る成熟精子の特性を利用して、ICSIを行う際に成熟精子を選択する方法です。
実際は、ヒアルロン酸が所定の位置に固着させてあるディッシュに精子を泳がせ、ヒアルロン酸に結合した正常な成熟精子をICSIに選択します。
ICSI後の反復流産や着床不全の方が対象となります。

 

膜構造を用いた生理学的精子選択術(ザイモートスパームセパレーターによる精子選択)

費用 25,000円(非課税)

受精後の胚の発育不良に関して、近年その要因の一つに精子DNAの損傷の関与が報告されています。
現在、体外受精・顕微授精では多くは「密度勾配遠心法」で運動良好精子を調整していますが、遠心分離という物理的操作が精子のダメージ(精子DNAの損傷)となり、それが受精卵の発育に悪影響を及ぼす可能性が考えられています。
膜構造を用いた生理学的精子選択術は遠心分離を行わないため、DNAの損傷が少ない運動良好精子の選択が可能であると考えられています。
体外受精・顕微授精で移植可能胚が得られないか、これまで胚移植しても着床または妊娠に至らなかった方が対象となります

 

子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)

費用 11,000円(非課税)

胚移植を行う予定の前周期に子宮内膜を擦過(スクラッチ)し、翌周期に胚移植を行います。
子宮内膜を擦過し子宮内膜に少し傷を付けますが、傷つき軽い炎症を起こした内膜では炎症を修復する因子が分泌されます。
胚が着床するときも軽い炎症反応が起こっていると考えられており、前もって子宮内膜を擦過(スクラッチ)をすることで、子宮内膜が反応し着床しやすくなるとされています。
子宮内膜細胞診用の器具を子宮内に挿入し、内膜細胞診と同様な操作で子宮内膜を擦過します。チクッとした痛みがありますが、短時間で終わります。
反復着床不全の方が対象となります。

 

子宮内膜受容能検査(ERA;エラ・ERPeak)

費用
ERA 128,000円(非課税)
ERPeak 110,000円(非課税)

子宮内膜受容能検査(ERA・ERPeak)は胚移植と着床のタイミング(着床の窓)が合っているかどうかを調べる検査です。
反復着床不全の方が対象となります。

>>着床不全の検査

 

子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE;エマ/アリス・子宮内フローラ検査)

費用
EMMA/ALICE 62,000円(非課税)
子宮内フローラ検査 44,000円(非課税)

以前は無菌だと考えられていた子宮内にも細菌が存在し、細菌叢(フローラ)を形成していること、さらに細菌叢の状態によっては不妊症や不育症の原因になることが分かってきました。
子宮内細菌叢検査では、細菌叢における善玉菌(ラクトバチルス)の割合や、慢性子宮内膜炎の原因となる悪玉菌を調べます。
反復着床不全の方が対象となります。

>>着床不全の検査