子宮筋腫は婦人科を受診される外来患者さんのなかで、最も多い疾患の一つです。
子宮の筋肉にできる良性のこぶで、できた場所によって、漿膜下筋腫(子宮の表面から外側に突き出る)、筋層内筋腫(子宮の筋肉の中に埋まっている)、粘膜下筋腫(子宮内腔に突き出る)に分けられます。

成人女性の約4人に1人は大なり小なりの子宮筋腫を有していると推測されています。
無症状のことも多く、子宮癌検診や、妊娠で受診された時に偶然発見されることもあります。 

子宮筋腫は基本的には、良性疾患であり、また閉経すれば自然に縮小していくことが期待できるため、筋腫があったとしてもすぐに治療しなくてはならないものとは限りません。
筋腫が大きくても、また筋腫の数が多くても無症状のものは経過観察とするものもありますし、筋腫が小さくても筋腫の位置によっては症状が強く、治療しなくてはならないものもあります。

子宮筋腫の種類

子宮筋腫の種類

子宮筋腫の症状は

最も頻度が高く問題となるのが、過多月経(レバー状の塊が出る)による貧血や月経困難症(生理痛)です。その他の症状としては、筋腫による圧迫症状で、膀胱圧迫による頻尿や残尿感(おしっこの回数が多く、すぐまた貯まった感じがする)、直腸圧迫による便秘などです。

 

子宮筋腫と不妊

子宮筋腫が不妊症の原因になる場合もあります。粘膜下筋腫は子宮の内腔に突き出た筋腫であるため、受精卵の着床が妨げられます。

筋層内筋腫でも、4〜5cm以上あるものは、子宮の内腔を変形させたり、子宮の血流を妨げることにより、同様に受精卵の着床が妨げられます。

また筋腫の位置によっては卵管を圧迫し受精卵(胚)の通過を妨げます。

 

子宮筋腫の検査法

内診と超音波検査でほぼ診断がつきますが、CTやMRI、子宮鏡検査をおこない、筋腫の部位や大きさ、個数をさらに詳しく調べます。

 

子宮筋腫の治療法

子宮筋腫に対する治療法には、保存的治療法と手術的治療法があります。

従来、子宮筋腫に対する治療法は、手術的治療法であるお腹を切って(開腹)での子宮摘出術が最も選択されていました。近年、子宮筋腫に対する内視鏡下手術や、子宮筋腫を栄養する血管を遮断することによって筋腫を小さくする治療法(子宮動脈塞栓術)など、いわゆるお腹を切らない手術や、また、子宮筋腫に対する優れた薬剤が開発され、子宮筋腫の治療に多くの選択肢が考えられるようになりました。

 

お腹を切らない子宮筋腫治療

GnRHアゴニスト療法による子宮筋腫の治療

子宮筋腫は女性ホルモンであるエストロゲンに刺激されて増大するので、このエストロゲンを下げれば、子宮筋腫は縮小します。

GnRHアゴニスト(リュープリン注射、スプレキュア点鼻薬)は、卵巣からのエストロゲン分泌を抑制し、月経(生理)を停止させ偽閉経状態にし、その結果、子宮筋腫の縮小が得られます。

ただこの薬物は、投与期間中にのみ効果があり、投与を終えると、子宮筋腫はすぐ元の状態に戻ります。また投与中に更年期症状が出現したり、長期投与によって骨粗鬆症の問題が起こる場合があります。

したがって、この薬剤が最も適しているのは、手術前に一時投与することで子宮筋腫が縮小し、開腹手術でなく腟式手術が可能となったり、そろそろ閉経に近くこの薬剤で閉経の状態にしながら、自然閉経にスムーズに移行できる患者さんと考えております。

腹腔鏡下手術による子宮筋腫の治療

お腹を切らずに子宮筋腫を手術する方法として、腹腔鏡下手術があります。 お腹の中の操作は腹腔鏡下で行い、腟から子宮(筋腫)を摘出する腹腔鏡下膣式子宮摘出術(LAVH)や、腹腔鏡下にすべての操作を行う全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)、また腹腔鏡下に子宮筋腫のこぶだけを摘出し子宮は温存する腹腔鏡下筋腫核出術(TLM、LAM)があります。

腹腔鏡操作は、臍下に1cmの小切開でボールペン大の腹腔鏡を挿入します。また下腹部左右に5mmの小切開で鉛筆大の鉗子を挿入し、腹腔内の手術操作を行います。

腹腔鏡下手術は、切開創が小さく、術後の回復も早く、早期の社会復帰が可能です。また術後、お腹のなかの癒着も少ないため、子宮筋腫が原因での不妊症患者さんに対する筋腫核出はこの手術療法が最適と考えております。

子宮筋腫の手術療法として、全例の患者さんに行えるわけではありませんが、適応さえ誤らなければ、非常に福音ある治療法であると考えております。

子宮鏡下子宮筋腫切除術(レゼクトスコープ)による子宮筋腫の治療

子宮内腔に突き出る粘膜下筋腫は、そのこぶが小さくても症状が非常に強く、過多月経(生理量が非常に多い)による貧血や、不正出血、不妊の原因になります。このタイプの筋腫に対しては、お腹を切ることなく、子宮口より内視鏡(子宮鏡)を挿入し、子宮内腔に突き出た筋腫のこぶだけを削って切除する子宮鏡下子宮筋腫切除術(レゼクトスコープ)が非常に有効です。

子宮動脈塞栓術(UAE)による子宮筋腫の治療

子宮筋腫を栄養する血管は、その大部分が子宮動脈に依存しています。一方、正常子宮筋層や子宮内膜は一部は当然子宮動脈から栄養されていますが、他の血管からも、豊富に栄養されています。そこで考えられたのが、子宮動脈を遮断(塞栓)することで子宮筋腫は縮小しますが、他の正常な組織は比較的栄養障害が起こらないとされるこの治療法です。

この治療による子宮筋腫の縮小率は約50%で、症状改善率は過多月経については80%〜85%、月経痛については80%弱で、患者さんの満足度は90%以上であったとの報告があります。

子宮筋腫を有する不妊症患者さんにこの治療を行った後、妊娠が成立、継続したとする報告もあります。

実際の手技は、透視下に鼠径部の血管からカテーテルを挿入し、子宮動脈まで進めた後、そこに塞栓物質を注入し子宮動脈の血流を遮断します。

この治療法はまだ新しい治療法であり、その適応や長期予後、および合併症については、まだ統一された見解は得られておりません。また不妊症の患者さんや将来妊娠を希望される患者さんへのこの治療の適応については結論にいたっておりません。